
【社長対談】地方都市札幌でWebサービスを立ち上げた2人が本音で語るいまとこれから
- 5862
- views
こんにちは!
札幌のITベンチャー企業で広報をしているほなみんです。
早速ですが、皆さんは地方都市のIT業界についてどういう印象をお持ちですか?
最近は福岡市をはじめ自治体レベルで「スタートアップ支援」を行うなど、地方スタートアップが注目されていますよね。
しかし、同じく地方都市の北海道札幌は盛り上がりに欠ける印象があります。(※勝手なイメージです)
そんな中、北海道札幌でWebサービスの立ち上げ・収益化に成功している会社は、現状どのようにサービスを運営し、今後についてどのように考えているのでしょうか?
理解を深めるべく、札幌を拠点にWebサービスを事業としている2社”Gear8“と”Luler“の社長同士に「Webサービスの現状と今後について」本音で語ってもらいました。
地方都市・札幌のWeb・IT業界に興味がある方や、Webサービスに関心がある方は必見ですよ!
人物紹介とサービス内容について
今回対談してもらう人物とサービス概要を紹介します。
右:Gear8代表取締役 水野 晶仁 (40)
訪日タイ人観光客向けに開発したアプリTrippino(トリッピーノ)では25,000ダウンロード突破!(※2017年現在)
2017年に他言語対応(繁体中字・英語)・2020年までには拠点を8箇所に展開と絶賛拡大中!
左:Luler代表取締役 沼博人 (37)
2008年に法人化してから今までに合計7つのWebサービスを開発。
ebook5(イーブックファイブ)は国内一使われているHTML5の電子カタログサービスに成長(※2017年当社調)
それでは、水野社長のTrippinoと沼のebook5のサービスをざっくり比較してみましょう。
利用者に課金してもらうebook5と、利用者向けに掲載する情報にお金を払ってもらうTrippino。
それぞれタイプは別ですが、「札幌でWebサービスを行っている」という共通点があることがポイントです。
それでは、社長対談スタートです。
社長対談

本日はよろしくお願いします。

こちらこそ、よろしくお願いします。
Webサービスを始めたきっかけについて

早速本題ですが、僕たちはWebサービスを提供しているわけですが、元々はWeb制作事業からスタートしているということが共通点ですよね。
水野さんがWebサービスをはじめたきっかけって何でしたか?

うちは受託開発をメインに仕事をしています。お客様にとって最良のかたちにするためにWebサイトを作ること以外の仕事にも手探りで取り組んできました。
そんな中で、「自分たちのWebサービスがあれば、もっとトライ&エラーで学ぶ機会が増やせるのに」と思ったことがきっかけです。

そこで得たものを受託開発の仕事にも活かして、良い相互効果を生みたいなと。あとは純粋に力試しのような部分もありますね。
沼っちょはどうでしたか?

なるほど!
僕の場合は、少し強い言い方をするとお客さんのWebマーケティングをサポートして利益をあげる力があるなら、自分たちでもできるはず!というシンプルな考えです。
多くの競合との差別化ついて

素人目線ですが、Trippinoの競合はTripAdviser(トリップアドバイザー)などの大手になるのかな?というイメージを持っています。
今は様々な観光系のアプリやサービスがあると思いますが、どのように差別化しているのでしょうか?

Trippinoでは”外国人旅行客目線で北海道の紹介をする“ということに焦点を置いています。
例えば、実際に外国人旅行客が体験した内容をレビューとして書いてもらったり、アプリ内では各国の旅行ニーズに合わせた内容を発信するようにしています。

現地の人目線ですか。
それは日本人が作るコンテンツとどう違うのでしょうか?

タイ人が作るコンテンツには、視覚的な情報が豊富ということが一つあります。
目的地までの行き方を案内する場合、日本人は道順や駅の名前で説明するのに対して、日本語がわからないタイ人には看板の色や特徴的なオブジェなどの目印の方がわかりやすいんですよね。

他にも食べ物や観光地もタイ人目線の感覚で紹介しているので、観光客も信頼できますし共感してもらいやすくなります。
日本人とは文化も観点も違うので色々と面白いですよ。

なるほど、それは僕たちでは気づきにくい視点ですね。
ちなみに、ユーザーがTrippinoを使うのはどのタイミングなんでしょうか?旅行前とか、旅行中とか…

タイ人の場合は旅行中にアプリを使う人が圧倒的に多いです。
なので、タイ人旅行者向けTrippinoでは、旅行前にはWebメディア・旅行中はアプリを使ってもらうスタイルを理想としています。
※Trippinoはアプリだけではなく、Webメディア(http://trippino-hokkaido.com/blog/)も運用しています。

そのあたりの特徴を掴んでいないと、機能の優先順位付けなどを間違えてしまいますね。
旅行中に活用できるアプリとしては、どのような工夫をしているんでしょうか?

タイ人旅行者の中には細かな計画を立てずに北海道へ来る人も多いので、僕たちが観光コースを作成してコンテンツにすることで「北海道に来たはいいけど、何すればいいんだろう?」と路頭に迷う観光客の手助けができるようにしています。
他にはSNS好きというお国柄に合わせて、フォトジェニックな撮影スポットや、タイ映画の舞台になった北海道の撮影スポットの紹介したり、アプリ内に「この店舗に行けばステッカーが貰える!」といった特別な特典を用意してスタンプラリー的に楽しんでもらえるような動線を作るなどの工夫をしています。
※Facebookの都市別登録数は、タイ・バンコクが世界一なんだそうです。
今後の課題について

ユーザーのアクティブ率が高いのが旅行中ということは、(観光客数に比例して)数字的に寂しい月があったりしそうですね。
アプリ全体の数字を上げていく施策は考えていますか?

そのあたりは今後の課題になると思います。
今のところ、「コンテンツの価値をどこまであげることができるか」というところを突き詰めていきたいなと考えています。
(c)gggggggg.jp
剣淵町とのTrippinoを活用したコンテンツを作成した結果、多くのタイ人観光客の集客に成功しました。

これからTrippinoHOKKAIDOを1つのビジネスとして成立させるのか、それとも会社としての一つの武器として運用していくか、その辺はどう考えていますか?

今は後者ですが、ゆくゆくは1つのサービスとして走らせたいと思っています。
どこかでドライブさせる時期はくると思いますが、今すぐ単独のビジネスとして走らせるということは考えていません。

もしやるとしたら一気に多言語対応を進める!というのが一つありますが、進めるとなると走らざるを得なくなりますよね。ネガティブな言い方ですが。(笑)
北海道のインバウンド事業について

Trippinoに登録している北海道の企業や飲食店はどのくらいなんでしょうか?

現在登録されているスポットとしては、1,500ヶ所を超えました。
内訳としては、北海道で他事業展開している企業や小売業、ホテルなどの観光施設や飲食店が主です。

北海道は東京ほどお金が潤沢にあるわけではないので、広告費が少額になりやすい印象です。
クライアントさんが北海道の企業・自治体とのことですが、その辺はどうなんでしょうか?

まさにそのとおりで、北海道は観光産業が強い地域にも関わらず、そこにかけられているお金は少ないですね。

せっかく北海道には良いコンテンツが沢山あるのに、もったいないですね。

自分なりに調べたんですけど、根強く残っている北海道独自の保守的な文化が根本にあるのかなと考えています。
企業間で周りの状況を見合ってしまうというか。

道外に出るようになって気づきましたが、例えば「これから絶対に流行る新しいサービスがあるんです!」とPRしたときに東京や海外では「他でやっていないなら、うちがやります!」となりますが、北海道では逆に「どこもやってないなら、うちもやりません」と難色を示す方もいらっしゃるんですよね。

確かに、北海道の企業が保守的っていうのは昔から言われていますね。
地方都市である札幌を拠点にしているからこそできることも多くあるんでしょうけど、水野さんの言うとおり新しい創造という分野においては少し遅れをとっているのかもしれないですね。

そうですね。
サービスが拡大するにつれて課題も色々と増えているのですが、そこも試行錯誤を重ねながらやっていこうと思います。
アプリ開発2年で25,000ダウンロード突破!マーケティング手法について

ちなみに、Trippinoは実際どのくらいの人に使われているサービスなんですか?

ダウンロード数だけで言えば、2年間で25,000ダウンロードを突破しました。

25,000ダウンロードってスゴイですね。
(ダウンロードを集めるために)一番効果的だった方法って何でしたか?

1番効果があったのが「チロルチョコ作戦」ですね。
現地の観光系イベントに参加して「チロルチョコ1つあげるから、ダウンロードしてね」って宣伝しただけなので、そんなに胸を張って言えることではないのですが…(笑)

しかも僕たちが出展している訳ではなくて、お客さんの手伝いで行っていたんですよね。
ブースの隅っこで、スーツケースの上に「Trippino」って書いたダンボールを置いてちゃっかりアピールしていたら、あっという間に10,000ダウンロードを突破しました。

それは面白い(笑)
1ダウンロード10円で買えたと考えたら激安ですよね。
※当時の価格帯が1つ10円でした。

チロルチョコの金額だけでいうと破格ですね!
ただ、そこには裏話が色々とあるのでオススメはできませんが(笑)

マーケティングについては、Webサービスである以上、Webマーケティングも今後本腰をいれて行く必要があると感じているので、うまくオンラインとオフラインを使い分けて訴求する形を探していきたいですね。
札幌のWeb業界のこれからについて

地方都市と言えば、札幌のWeb業界は受託開発だけをやっている会社が多い印象がありませんか?

確かに、言われてみればパッと思いつくような(Webサービスをやっている)会社がないですね。

僕の理想ですが、もっとWebサービスを持つ人同士が情報共有できる場所が欲しいんですよね。
その中に成功事例があったりすると、「あの人にできるなら私だってできそう!」って風潮が広がるんじゃないかなと考えています。

身近なお手本が受託だから受託開発が増えるというのは一理ありますね。
受託と自社サービスの両方をやることは、リソースを集中できないというデメリットはあれど、Webサービスを運用するとノウハウはたまるしスケールする可能性も高まるしメリットが多くて面白いんですけどね。

最近はWebサービスでマネタイズするのが格好いいという風潮が強い気がしていますが、僕の持論では受託開発とWebサービスを切り離す必要はないんじゃないかなって考えます。

それに関しては僕も同じ意見です。
最近はWeb制作会社だけではなく、他業種がWebサービスに進出する事例が増えていて面白いなと感じていました。

そうそう。
北海道の豊富なコンテンツとWebの力を利用したWebサービスが今よりもっと増えていけば、観光業やWeb業界も盛り上がるんじゃないかな。

双方向でいいとこどりして、さらにいいサービスを作ることができるという期待の方が、この先は大きいかもしれないですね。

日々の受託事業から得るきっかけも多いですし、そこから新たな形を模索して行く事業展開が北海道らしいのかもしれないですね。
福岡のスタートアップじゃないですけど、同じ地方都市として札幌も負けてられないです。
以上で対談は終了です。
お付き合いいただいた水野社長、ありがとうございました。
編集後記
私事ではございますが、沼は私が属する会社の社長であり、水野さんとは何度かお酒の席でお世話になったことも。
水野さんはいつもホンワカ癒し系なイメージ・沼に関しては↓こんな姿しか知らなかったため、2人が仕事について真剣に話すギャップに驚いてしまいました。
今期の目標は東京オフィスの引越しにしよう。そんで黄色いランボルギーニ買ってパーティーばっかりしたい
— 沼 博人 (@prHiroto) 2017年6月1日
Luler社長である沼は、北海道を拠点にしたWebサービスが増やせるような環境づくりができればと考えているようです。
今後の活動に乞うご期待ください。
最後に、今回記事の中で紹介した二つのサービスをご紹介します。
どちらも無料で試すことができますので、ぜひ一度試してみてくださいね!
それでは皆さん、したっけね〜
札幌発のWebサービスを使ってみよう!
TrippinoHokkaidoのアプリダウンロードはこちらから
ebook5の無料トライアルはこちらから